岡山県、子宮頸がん対策強化。『若い命を守る〜知ってなくそう感染症〜  子宮頸がん予防に関する事業』立ち上げへ

2019.08.05

先進国であるにも関わらず、子宮頸がんが増えつつあるという異常な事態の日本。

HPVワクチンの接種率も低い、検診率も低い、という積極的対策のなされていない中、県が主導し子宮頸がんを減らそうという動きが出てきています。

2019年、岡山県は368万円の予算をつけ、プロジェクトを遂行中です。
実施にあたっては県産婦人科医会や子宮頸がんプロジェクト岡山等と連携し、協力を得ながら事業が開始されました。

このたび、岡山県保健福祉部健康推進課 感染症対策班 総括副参事 日笠正文氏、主幹(薬剤師) 浜辺美千子氏 に取材させていただきました。

岡山駅前

(桃太郎発祥の地、岡山。駅前には桃太郎の銅像が凛々しい姿で岡山の街を見守っている)


—お時間いただきありがとうございます。

—山陽新聞、またNHKおはよう日本で岡山県が積極的に子宮頸がんについて取り組んでいらっしゃることを知り、今回、どのように子宮頸がんに取り組んでいくのか、具体的に教えていただきたく参りました。
https://www.sanyonews.jp/article/901515

—世界でみても日本だけが先進国の中で子宮頸がんが増えるという異常事態にあります。
諸外国では検診率も、ワクチン接種率も高く、中には子宮頸がんの撲滅も視野に入っている国もあります。一方で日本は厚労省がHPVワクチンの積極的勧奨を一時中止してから6年、接種率は1%未満になりました。
その中できちんと予算をつけ、子宮頸がんに向き合うという覚悟を決めた都道府県は本当に少ないと思います。

(岡山県)今おっしゃられたような状況を踏まえて、県では子宮頸がんの予防について、まずは子宮頸がん検診、ワクチン両方の正しい情報提供が必要であるという観点で事業を進めています。ワクチンについては、県として接種を推奨するのではなく、定期接種であることや、必要な正しい知識を接種対象者と保護者に向けて周知することが必要だと思っています。

-なぜ岡山県でこのような動きが出てきたのでしょうか?

(岡山県)岡山県の医師会からの要望もありましたが、やはり、知事の強い思い、予防可能な子宮頸がんについて救える命を一人でも多く救っていきたいという強い意志が大きな推進力になっています。

そのように方針を決めてくださる知事がいると動きも早くなりますね。

◆岡山県参考資料(岡山県の子宮頸がん予防に関する事業の参考資料。)


-今は具体的に何をなさっていますか?

(岡山県)保護者向けのリーフレットの作成に取り組んでいます。学校などを通じて配布することとしています。
そして、保護者とともに子宮頸がんの予防について話し合ってもらいたいと考えています。

子宮頸がんを減らすにはワクチン接種と検診の2本柱が必要です。国と同じスタンスだとワクチン接種率は上がらないと思っています

(岡山県)ワクチンの接種に関しては、国がまだ「積極的勧奨の再開」を行っていないので、県としても、国の方針から外れることは出来ません。どこまでが積極的勧奨ではないのか、具体的に国が示してもらえればと思います。

国のリーフレットの内容は古いと思っているので、そのようなリーフレットを作ってもあまり意味がないのではと思います。県のリーフレットを作成する上で、医師会の意見を反映していらっしゃいますか?

(岡山県庁からほど近い日本三大名園の一つ、岡山後楽園)

(岡山県)医師会の先生方からはもう少し踏み込んで記載してほしい、という要望も受けますが、記載については、ワクチンの有効性とリスク、副反応についてバランスをとる必要があると考えています。


—副反応とワクチンとの因果関係はないことは世界的にも周知のことですし、厚生労働省の副反応検討部会でも副反応ではないという結論が出ています。
因果関係のないことまでリーフレットに書くのはあまり意味がないことではないでしょうか?

(岡山県)医師会の先生はそうおっしゃっていますが、国が言っていないことには県として踏み込めない。国が動くまで時間がかかることもわかっています。

医師は科学的に正しいことを根拠とした行動を求めています。今の話を伺うと、県は行政としての正しい行いを求めている。お互いの「正しい」に違いがあるように思います。

(岡山県)そこはやむを得ないところだと思いますが、1年で1万人の女性が子宮頸がんを発症し、年間3,000人が亡くなっている状況をどうにかしないといけないという点では違いはないと思っています。

-子宮頸がんの話をする上で性教育も出てくると思います。何か対策を考えていらっしゃいますか?

(岡山県)子宮頸がんの予防対策として、性教育は不可欠であると考えています。ただ、現場レベルでは性教育に消極的な場合もあると思いますので、そのあたりの調整や連携が教育部局と必要になってくると思います。これは今後の課題です。

市町村の協力はどのように得ていくつもりでしょうか?

(岡山県)定期接種のワクチンは市町村が実施主体ですから丁寧に情報提供を行っていきたいと考えています。そういった中で協力してくれる市町村が増えてくる状況が理想的です。

-今の市町村のホームページを見ても、「今は積極的勧奨が中止されています」という文言が前面に出されていて、どんなに有用な情報がその先に書かれていても届かない。そのホームページの見せ方1つでそういった事態になってくると思うのですが。

(岡山県)そうですね。私達は正しい知識、情報を届けることが必要であると考えていますので、そこは見せ方の工夫が必要だと思っていますが、各市町村のホームページに関してはそれぞれで運営をしているのでそこは市町村の判断ということになります。

—頂いた資料に(3)動画配信、とありますがどのようなものを考えていらっしゃるのでしょうか?

 (岡山県)若い世代に直接情報を届ける手段としてVtuberを使った動画配信を計画しています。

なるほど。まだ4月からですので検診率が上がったり接種率があがったりなど成果としては出てきていないですかね?

 (岡山県)まだ事業を始めたばかりですので、成果の検証はこれからです。

どのように成果を測るのか、たとえば、ワクチン無料券配布数、検診受診率などが考えられますが、いずれにしても、今後の検討課題です。

メディアとの協力はどのように行っていく予定でしょうか?

 (岡山県)メディアには随時出していく予定です。リープレットも8月下旬から9月くらいには完成する予定ですので、しっかり広報していきたいと考えています。

最後にこの事業は今後も継続していっていただけるのでしょうか?

(岡山県)非常に重要なテーマですので、ぜひ、継続して取り組んでいければと思っています。こうした取組みを通じて、救える命を一人でも多く救えることにつながればと考えています。

(岡山県庁の窓からも見られる漆黒の岡山城。烏城灯源郷の準備を行っていた)

—ありがとうございました。
全国に先駆けて岡山県の子宮頸がんの患者数が減ってくることを期待しています!

 

取材日:2019年7月26日
取材:三輪 綾子(協会顧問・産婦人科専門医)