
2040年までに子宮頸がんのないフィリピンへ
2019.06.12
Ellen T.Tordesillas
2019年6月8日12時54分
フィリピンの保健省は「2040年までに子宮頸がんのないフィリピンを目指す」という高い目標を掲げました。
これはフィリピンで年間約7,000人の新たに発症している子宮頸がんの患者がこれ以上発生しないということです。
そして更に、何千もの夫が妻を失う、子どもが母親を失う、両親が娘を失う、親族が姉妹や叔母を失うことの悲しみから免れるということです。
保健省がん対策部長のDr. Clarito Cairoは、昨年5月30日にダイアモンドホテルで開催された第8回HPVサミットで、子宮頸がんはフィリピン女性では乳がんに次いで多く、国にとって大きな損害であることを述べました。しかし子宮頸がんは乳がんより致死率が高く、4人の女性が乳がんで生き抜くところに対し、子宮頸がんの場合2〜3人しか生き延びることができないと発言しました。(*1)
子宮頸がんに対しての現代における医学的な突破口の一つは、子宮頸がんがヒトパピローマウイルス(HPV)によって引き起こされるという発見です。つまり、予防可能だということです。
2018年5月19日に世界保健機関(WHO)のDr. Tedros Adhanom Ghebreyesusから、「世界中のすべての若年女性がHPVに対してワクチン接種を受けていること、そして30歳以上の女性はスクリーニングされ、前がん病変の治療を受ける」ことの徹底が求められたことで、子宮頸がん対策の強力な後押しとなりました。Dr. Clarito Cairoが子宮頸がんのないフィリピンに向けて提示したロードマップは、早期発見の重要性を強調しています。彼は、1回の訪問でスクリーニングと治療を組み合わせた、凍結または凍結に近い温度での冷凍治療法、およびHPVワクチン接種の拡大を含めたSingle-Visit Approach(SVA)について言及しました。(*2)
何人かの講演者が予防の重要性について説明しました。子宮頸がん予防(CECAP)ネットワークプログラムのディレクターであり、HPVサミットの全体的な進行役であるCecilia Llaveは、私立病院での従来の早期の子宮頸がん検査にかかる費用はたった800 ペソ(1,600円)であり、更に安価な酢酸による視覚化スクリーニング法(コルポスコピー)は50ペソ(100円)にしか過ぎないと述べました。
また、子宮頸がんは長い前がん病変があり、その間に発見され子宮頸がんへの進行を止めることができるということも講演者から指摘されました。本格的な悪性腫瘍に発展するには、感染から一般的に10年かかると言われており、30年かかる場合もあるかもしれません(*3)
HPVサミットは、社会から取り残された地域の女性に直接医療サービスを提供するNPO、LikhaanのプロジェクトであるTondo地区のLila Clinicのボランティアたちにより、子宮頸がんに対する数々の誤解と早期発見のための対策が共有されたことで活気あるものとなりました。DOH(The Department of Health )や医療界の「2040年までに子宮頸がんのないフィリピンを目指す」という方針を打ち出した理由の1つは、昨年2月14日にDuterte大統領によって署名された全国統合がん対策法(National Integrated Cancer Control Act ;RA 11215)の可決にあります。 そしてProject Brave Kidsの創設者であり、フィリピンがん連合のスポークスマンであるPaul Perezによると、先週その法律履行のための規制や規則が確定したとのことです。
NICCの規定の1つに、フィリピン健康保険公社(PhilHealth)によってカバーされていない治療の費用をカバーするがん援助基金(Cancer Assistance Fund)の設立が挙げられています。法律では「革新的な抗がん剤」の費用までもカバーされると言及されています。
Dr. Clarito Cairoは、2025年までにロードマップが問題なく実施されれば、包括的な子宮頸がん対策が実現し、患者の生存率が最適化されると述べました。
2040年までに、子宮頸がんは過去のものとなり、「フィリピン人は長生きし、健康で生産的な生活を送れるでしょう」。
*1 具体的には述べられていませんが、5年生存率のことと思われます。
日本全がん協加盟がん専門診療施設の診断治療症例について(5年生存率、10年生存率)
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2018/0228/index.html
5年生存率(乳がん93.5% 子宮頸がん74.8%)
10年生存率(乳がん82% 子宮頸がん69.8%)
*2 冷凍治療法は治療後の浸潤癌の発生が多いという報告があり、日本では他の治療法が推奨されている。
*3 文献によってばらつきがあるものの、HPV感染から子宮頸がん発症までは数年〜10年程度かかるという見解が多数みられる。
本記事はこちらの文章を医師の監修のもと、翻訳しております。
参考:Cervical cancer-free Philippines by 2040
https://news.abs-cbn.com/blogs/opinions/06/08/19/cervical-cancer-free-philippines-by-2040