HPVワクチンについてのまとめ

2021.02.15

※2021/2/9現在の情報です

 

《目次》
① HPVワクチンの現状
② HPVワクチンにはいろんなタイプがある??
③ 打ちたいけど打って意味がある?打つ前に検査は必要?性交渉後、男性、45歳以上、既婚など)
④ 承認されたってどういうこと?
⑤ どこで打てるの?

 

①HPVワクチンの現状

最近ようやくHPVワクチンという名前が浸透してきたように感じます。最近行った企業向けアンケートでは、ご協力頂いた参加者103名のうち62名は知っているという結果でした。まだ十分とはいえませんが、底は脱した印象があります。

HPVワクチンは平成25年度から「定期予防接種」となり小学校6年生から高校1年までに相当する(概ね12〜16歳)の女子は接種を受けられるようになっています。

通常の定期予防接種では、個別通知といって「あなたは接種対象の年齢になりましたよ。ぜひ受けに来て下さい」と個人宅に手紙が届くようになっているんですが、副反応の騒動などの影響で厚生労働省は個別通知を一旦中止したという経緯があります。しかし今年に入ってから自治体に個別通知するようにという声明が出され、まさにHPVワクチンを取り巻く状況が変化しつつあります。

 

②HPVワクチンにはいろんなタイプがある??

HPVワクチンには2価、4価、9価と3種類があります。

《ワクチンの名前》
2価HPVワクチン=サーバリックス
4価HPVワクチン=ガーダシル
9価HPVワクチン=シルガード9
※海外で売られているものは同じものでガーダシル9という名前がつけられています

○価というのは「○種類の」という意味です。2価ワクチンであれば2種類のHPV(ヒトパピローマウイルス)を、4価ワクチンは4種類。9価は9種類のHPVをカバーします。

 

《ワクチンの内容》
2価:子宮頸がんの原因になる確率の高いハイリスクのHPV2種類
4価:子宮頸がんの原因になる確率の高いハイリスクのHPV2種類+性感染症の原因になる2種類
9価:子宮頸がんの原因になる確率の高いハイリスクHPV7種類+性感染症の原因になる2種類

HPVは100種類以上が確認されているのですが、2価や4価で7割程度、9価であれば9割程度HPVへの感染を予防できると言われています。

打つ回数はどのワクチンを選んでも全て3回なので、自費で選ぶなら予防効果の高いものが良いかもしれません。価格は9価が一番高いです。

 

しかし「予防接種」となると国が決めているものを打つことになります。2価、4価がその対象となり国から補助がでます。小学校6年生〜高校1年生まではこの2種類であればおおよそ無料で受けられます。9価の接種を希望する場合、自費になりますが医療機関で打つことができます。

 

③打ちたいけど打って意味がある??どうすればいい?打つ前に検査は必要?
(性交渉後、男性、45歳以上、既婚など)

ワクチンを打つか打たないかは個人の自由です。とくに積極的勧奨の対象にない方々は自ら行動しなければなりません。ちなみに接種する前に感染しているかどうかを検査する必要ありません。

まず、どういう人たちに効果があるのでしょう。

 

1.性交渉の有無

一番効果が高いのは性交渉前で確実にHPVに感染していない時です。感染する前であれば、ワクチンが効果をもつ全てのHPVに対して効果があります。
性交渉の経験がある方はどうでしょうか?

もしすでにHPVに感染していたら、その感染しているHPVの種類に対しては治療の効果はありません。
しかしワクチンが効果をもつ全てのHPVの種類に同時にかかっている可能性は極めて低いですし、HPVに感染していたとしても自分で排除できれば、その後の2回目の感染を防ぐことができます。

HPVは感染する確率が高く、50歳までの性交渉の経験のある女性のうち8割は一度感染すると言われています。感染しても9割方は自分の力で排除されますが、自然に感染しても免疫は付きません。

HPVワクチンを打てば、繰り返しの感染を防ぐことができます。感染している状態でHPVワクチンを接種しても治療効果はありませんが、悪化させるということもありません。

 

2.年齢

第一推奨は積極的勧奨の10〜14歳の女性です。
次は15〜26歳まで。海外だとキャッチアップ接種といい、効果は当然あります。
次は27〜45歳まで。若い方が効果がありますので打つなら早めがおすすめです。
45歳以降はデータがありませんが、打ってはいけないということではありません。

 

3.男性

当然効果があります。海外では男性も積極的に接種する国もあります。それは男性においても癌を発症するリスクが抑えられるからです(中咽頭癌、陰茎がん、肛門がんなど)。
男性においてももちろん性交渉を経験する前が良いし、時期を過ぎて性交渉した後でも効果は認められるので接種をおすすめします。

男性の場合は、自分のがん発症リスクを抑えたければ2価や4価でも十分カバー力があります(4価は尖圭コンジローマという性感染症も予防してくれます)。男性の肛門がんへの適応が承認されたのもガーダシルです。

相手への感染を防ぐためには9価を接種しても良いと思います。海外では9価が主流ですが、日本では男性向けにはまだ未承認の段階です。早く男性に対しても9価HPVワクチンの承認が降りることが望まれます。

 

4.既婚

HPVは当然、性交渉で感染するので、パートナーが決まっていれば新たな感染の機会は減るでしょう。しかし、自分の大切な相手が持続感染(HPVが住み着いている状態)をしてれば、当然自分も感染する機会にさらされるわけですし、逆も然りです。

また関係性が多様化している時代ですので、パートナーがずっと同じとも限りません。ですので、自分の年齢と今後の感染の機会などを踏まえてよく考えていただければ良いと思います。

 

5.3回打たないとだめ?

14歳までに1回目を接種したら、6〜12ヶ月空けて2回目を打てば十分有効というのが世界的なコンセンサスです。しかし日本では3回の接種がすすめられています。承認薬として使用するのであれば、決められた回数打つことをおすすめします。

 

④承認されたってどういうこと?

承認された=保険適応になったということではありません。

承認されたというのはあくまで「正式に日本で使って良いものになりました」ということで、打つときは自費になります。ただ小学校6年生〜高校1年生までの女子は補助がでるので実質無料で打てるようになっている、ということです。

また新しい薬が出たときの日本での流れをご説明します。

製薬会社が「この新しい薬を日本で売っていいですか?許可下さい」と厚生労働省に申請します。その薬が安全なのか、効果はあるのかといったことを「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」という機関が審査をします。そこで「安全性はOK、効果もOK」が出たら晴れて承認薬になる、という流れです。

未承認薬というのはその承認が降りる前の状態です。

しかしその中には、海外では有効性が証明され、承認・販売されているにもかかわらず、日本では承認・販売がなされていない薬剤も含まれます。また同じ薬でも〇〇病を治療するときには承認がおりていても、△△病を治療するときには承認されていないことがあります。これを未承認適応(適応外使用)といいます。

承認が降りていると良いことは、万が一副作用が出た場合に国の「医薬品副作用被害救済制度」というものが適用されることです。

https://www.pmda.go.jp/kenkouhigai_camp/index.html

承認が降りていない薬剤を使用して、万が一なにかあった場合は副作用を治療するときにかかるお金(入院費、治療費その他)は自分で払うことになります。

あらゆる薬は副作用のリスクはあります。ただ、副作用が出た場合にはその保障を国がしてくれるのはありがたいですよね。

サーバリックスとガーダシルは2015年に承認されていました。

しかしHPVワクチンの副反応報道の影響もあり9価HPVワクチンはなかなか承認が降りず、9価を打ちたいという人は仕方なく海外のガーダシル9を輸入して使用していました。今回の承認を機に混乱を避けるため「シルガード9」と名前を変えて流通することになるので、これからはガーダシル9ではなくシルガード9を接種しましょう。

また今年に入って男性でもガーダシルが「肛門がん予防」として適応の承認がおりました。男性もガーダシルであれば国の保証付きで接種することができます。

 

⑤どこで打てるの?

ようやくシルガード9は2021年2月24日より発売になります。
クリニックより申請が入ると製薬会社がそのクリニックに薬品を卸すようになります。全国に流通するまでは少し時間がかかるかもしれませんが、徐々に打てるクリニックが増えるはずです。

ぜひ「自分の住んでいる地区、シルガード9」で検索してみて下さい。